本日(令和7年1月8日)現在、高校生の暴行動画が拡散されてニュースになっています。

ただ、その動画の内容は、誰かが死んだり大けがをしたりしたというものではなく、一方的ではあるものの、「どこにでもある暴行事件」に過ぎません。

これに対し、個人情報の特定を含め各所にいろいろな攻撃が起こっていると報道されています。

攻撃者は、悪事を許さないつもりだと言いたいのでしょう。しかし、その悪事の内容が吟味されているとは到底思えません。今回の事件は、どこにでもあるような事件で、動画として証拠が残って拡散したために「分かりやすくなった」に過ぎません。性犯罪とかでもないので、証拠が残ること自体が「悪事」となるとも思えません。そうすると、攻撃者は、つまるところ「たたきやすいものが見つかったから、ここぞとばかりにたたいている」ことになります。見えやすく不快なものをたたきたかっただけです。

もちろん、暴行は犯罪ですし、「加害者」は反省・更生する必要があるでしょう。しかし、だからといって、「加害者」には何をしてもいいということにはなりません。例えば、窃盗罪で無期懲役とされれば、バランスを欠くことは明らかです。何より、個人情報の拡散、誹謗中傷等は、それ自体が立派な犯罪であるだけでなく、各所に深刻なダメージを与えます。「正義の味方」のつもりが犯罪にまで手を染めてどうするのでしょうか。正義の実現手段を大きく誤っています。

しかも、捜査機関に告発するだけならともかく、資格もないのに自ら制裁(抗議を含む。)を加えようとする発想については、現代刑事法の原則をまるっきり無視した暴挙というほかありません。

表現の自由はありますが、無制限でないことは明らかです。名を借りた誹謗中傷まで公認されるわけではありません。

教育機関において、いじめという名で犯罪が隠されてきたということがあったとしても、炎上の理解可能なきっかけとは分析できても、到底「錦の御旗」になるものではありません。捜査機関は学校にも入れ、と言えば済むだけのことです。

こういった炎上が起こるのは、「正義」の名を借りる制裁が、強い「快感」を伴うからです。そこに「正義」などありませんし、自覚がないだけで、もはや卑劣な快楽に溺れる行為にほかなりません。

現代は、言ってみれば、「誰でも(特に集団になれば)、指一本で人を殺める(自殺に追い込む。社会的に抹殺する。)ことができてしまう」世の中になりました。情報発信の前には、その影響の大きさも考える必要があります。

投稿者プロフィール

松本 治
松本 治
「弁護士は、社会生活上の医師である。」この信念に基づき納得の解決を目指します。
どんな小さな事件でも、手を抜かないで取り組みます。1件1件、心を込めて「手作り」の弁護活動をご提供いたします。