一卵性双生児(遺伝子が全く同じ)と二卵性双生児(遺伝子の共有は、約50%)を比較して、さまざまな現象(IQ、犯罪率、身長、体重など)に対して遺伝が寄与する割合、環境が寄与する割合などを分析することを「ふたご研究」と呼びます。

それによると、環境は、家庭環境などの共有環境、各人で異なる非共有環境に分けられるそうです。

そして、ある現象について、一卵性の相関係数をA、二卵性の相関係数をB、遺伝の寄与率をX、共有環境の寄与率をY、非共有環境の寄与率をZとすると

X+Y+Z=1(100%)…(1)

A=X+Y…(2)

B=0.5X+Y…(3)

という関係式が成り立ち、AとBの値が分かれば、X・Y・Zの値、つまり、遺伝と環境の寄与割合が求まる

のだそうです。

しかし、単なる統計的な数値である相関係数の操作から、なぜ合計が100%となる「寄与率」なるものが導き出されるのか、十分な説明はありません。

遺伝とそれ以外の要因を分けるものとして「寄与率」を考えることは、まあよしとしましょう(1)。

一卵性でも違う部分は、特有の環境の要因によると言えそうです(2)。

1-A=Z…(2')

(相関係数から、何の操作もなしにこの等式(Zの単位は%)が言えるか、は吟味の必要があると思いますが)

問題は、(3)の式です。

二卵性双生児の遺伝子の共有率が約50%であることから、何の疑問も留保もなしにXに0.5を掛けるというのは、論理の飛躍があるように思います。遺伝子の共有率とその発現のしかたに、確たる法則はまだ見いだされていないそうです(ポリジーンという発想)。そこに統計的概念である相関係数をダイレクトに結びつけることは、そもそも無理があると言わざるを得ません。

また、例えば、一卵性においてはA=0.9と高い相関を示した現象が、二卵性になるとB=0.3と比較的低い相関になるということは、原理的にあり得ないと言い切れるのでしょうか?というのも、これらの数値を(2)(3)に代入すると、X=1.2、Y=-0.3という解になってしまい、遺伝率120%という結論になってしまいます。

もちろん、ふたご研究の門外漢であり、統計学すら素人ですが、連立方程式くらいは解けるので、疑問に思った次第です。明快な説明をご存じの方は、解説して下さい。

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松本 治
松本 治
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