現在(令和8年10月1日)、裁判所で認められる損害賠償額(慰謝料額)が少なすぎるとの問題意識から、法務省が民法の改正を検討する研究会を立ち上げていると報道されています。

現在の民法は、不法行為をした者は、「損害」を賠償する責任があるとのみ規定されています(民法709条)。つまり、賠償は、精神的なものも含め、あくまで受けた実損害の「償い」であって、マイナスをゼロに戻すものという位置づけです。最高裁も繰り返しそのように判断しています(最大判平成5年3月24日、最判平成9年7月11日等)。

これに対し、アメリカ等では、懲罰的損害賠償といって、不法行為の抑止を目的に実損害を超えた賠償額が認められています。日本の感覚ではささいなことで途方もない額の判決が出たことが話題になることもあります。この制度は、裁判官(裁判体)の感覚による差が大きすぎて、すくなくともそのまま日本に導入すべきではないと考えます。

他方、誹謗中傷といった明らかな不法行為によって閲覧数・再生数を「稼ぐ」ことができ、直接に金銭的利益につながっているという現状があります。これに対し、被害者側は、投稿者(加害者)の特定自体に大きな手間がかかる上、そこまでしても認められる金額がわずかなものにとどまっています。これはこれで、「やり得」を許す結果となっており、何らかの手当が必要でしょう。

不法行為法は、民法制定以来、ほぼ改正されておらず、初めての大改正ということになります。変える必要性は明らかながら、今まで裁判所にゆだねてきた「損害額」の初めての大きな変革となるため、慎重かつ大胆な議論を望みたいと思います。

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松本 治
松本 治
「弁護士は、社会生活上の医師である。」この信念に基づき納得の解決を目指します。
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