旧ホームページで、法曹を目指す方に向けて司法試験に関する記事を書いていました。ここでは、その一段階前の、法曹(特に弁護士)を目指すのに向いているのはどういう人か、私なりの考え方(理想像)を書いてみたいと思います。

まず、論理的思考力がある人でしょう。これは、法曹に決定的に重要な最低条件と言ってもいいです。法律の世界は、「なんとなく」だけでは通用しません。どの見解・立場に立つにせよ、(たとえ最初が「なんとなく」であったとしても)「ここでこういう考え方をすれば、結論はこうならざるを得ない。」「結論が違うのは、ここで考え方が分かれたからだ。」といった議論ができないと話になりません。ですので、文章を読むので文系と思われがちですが、理系的素養も重要です。

次に、少し抽象的な精神論になりますが、熱いハートとクールなマインドを両方兼ね備えた人です。特に弁護士の世界で顕著ですが、熱いハートだけでは、依頼者の「不幸」に引っ張られて自分を失ったり(ひどいときは、精神的に病んだり)、独りよがりで努力が空回りしたりとなります。逆に、熱いハートがないと、社会のために働くための原動力がなくなり、金の亡者になってしまったりしがちです。中でも、検察官や裁判官は、現行法上、時には死刑を取り扱わざるを得ない(求刑・判決)という重大な任務ですから、両方のバランスが特に重要なのだろうと想像できます。

また、人を見下さない人だと思います。法曹三者はいずれも、いわゆるエリート(あえてこの言葉を使わせてください。)として、若い時から強大な権限を与えられます。社会的地位も「高い」とされています。そして、扱うのは、特に刑事では、いわゆる底辺の人(あえてこの言葉を使わせてください。)が巻き起こす事件です。ここで人を見下すと何が起こるか。考えるだけでも恐ろしいです。社会は、さまざまな立場の人々がいないと成り立ちません。得意不得意があって当然ですし、そこに優劣(貴賤)はありません。野球のポジションのようなものです。9人いて初めて試合になるのであって、ピッチャーが欠けても、レフトが欠けても、まっとうな試合はできません。さらに言えば、監督も、指示が「得意」だからみんなで従った方が勝ちやすいだけの話で、「偉い」という評価は違うと思います。

あと、面倒を面倒と思わない人は向いていると思います。弁護士になってみて一層感じるのですが、法曹は、裁判所という「お役所」の最たる組織を相手に仕事をしているので、いろいろ「面倒くさい」ことが多いです。少しのことでも、さまざまな分厚い書類を取り揃えなければ、受け付けてもらえないということは多々あります。こまごまとしたことを面倒くさいとか苦痛だとか感じることがなければ、アドバンテージになるでしょう。

そして、いろいろ書いてきましたが、あえて言うなら、「普通」の人あるいは「普通」が何か分かっている人、言葉を変えれば「常識人」だと思います。判例を大いに参考にする裁判官・検察官なら、判例には「社会通念」という言葉がよく登場しますので、その内容が分からないと仕事になりません。弁護士も、「書式と常識(法曹ダジャレです。)があればいい」と言われるくらい、常識は必須です。

ここまで読んでくださる読解力・忍耐力の持ち主のあなた、法曹を目指してみませんか?

※画像は、AI作成です。

投稿者プロフィール

松本 治
松本 治
「弁護士は、社会生活上の医師である。」この信念に基づき納得の解決を目指します。
どんな小さな事件でも、手を抜かないで取り組みます。1件1件、心を込めて「手作り」の弁護活動をご提供いたします。