国会が危ないです。
現在(令和7年12月1日)、台湾有事をめぐる首相答弁が問題になっています。ここで、そのこと自体について論評することはしません。問題にしたいのは、答弁が出てきたことの「責任」をめぐる議論です。
先日の党首討論で、首相は、「聞かれたから答えた」旨を答え、責任が答弁を「引き出した」野党にあるかのような言い方をしました。支持者も同じような考え方のようです。しかし、無論、答えるか答えないかも含め、答え方の方は、全面的に首相・与党の責任です。もし質問が不適切と考えたなら、その旨指摘すればいいだけの話です。最終的には、選挙で判断されます。ことの本質は、そこではなく、「国会が止まる」リスク(本当にあるかどうかは別)と、中国の反発を招いて「実害が出る」リスク(中国側に正当性があるかは別)の判断を首相が「誤った」(適切でないこと自体は、答弁のしかたからも自認されている)点にあると思います。
この点を差し置いて、野党の質問が「誘導的」で首相が「乗った」(に過ぎない)から、野党が「悪い」のだという論調は、国会の言論を不当に委縮させるものです。このような「ひどい」論調は、今までなかったと思われ、国会・世論含めての「劣化」が懸念されます。
同じ党首討論では、「政治とカネ」の問題を問われたにもかかわらず、首相側が「そんなことより」として定数削減を持ち出してもいます。十分に時間があって、対等に討論する場であれば、(問題がないことはないにせよ)まだ分からなくはないところです。しかし、今回は、一応「問う」野党側と「答える」与党側という場面設定であり、このような話題転換を許すなら、そもそも議論になっていきません。また、出たタイミングも、時間切れ間際ということを考えると、不当な「逃げ口上」と評価せざるを得ません。
与野党の政権交代があり得る民主主義国家であることを考えると、右だとか左だとかを問わず、国会の劣化は危ないと思いますし、それを支えるであろう世論が敵・味方二元論になることは、さらに危ないと思います。
投稿者プロフィール

-
「弁護士は、社会生活上の医師である。」この信念に基づき納得の解決を目指します。
どんな小さな事件でも、手を抜かないで取り組みます。1件1件、心を込めて「手作り」の弁護活動をご提供いたします。
最新の投稿
弁護士から2025年12月4日大丈夫か?首相(と官僚)の日本語力
弁護士から2025年12月1日「そんなことより」そんなこと
弁護士から2025年10月30日税金で集めた証拠は誰のもの?
弁護士から2025年9月26日前橋市長と兵庫県警と


