長野地裁で令和7年9月4日に出された無罪判決で、このような判示があったと報道されています。
そもそも刑事の裁判所は、まずもって黒(有罪)か黒でない(無罪)かを判定するところであり、「疑い」そのものの有無を認定するところではありません。真犯人がいたなどで、「疑い」も「ない」ことを認定するのなら、まだ分かります。しかし、無罪判決を出しながら、未練がましく「疑いは濃厚」などというのは、完全な蛇足であり被告人に対する名誉毀損にほかなりません。
社会は、これをどうとらえるでしょうか?「裁判所までがそういうのだから、検察が立証に失敗したのが無罪判決の原因で、被告人は真犯人に違いない。」と考えてしまう人が多いように思います。
完全な推察ですが、判決理由を起案させられた裁判官と裁判長が、裁判員の入った合議の多数決で負けたのでしょう。(この点は、裁判体に守秘義務があるため、検証のしようがありません。)
さらに解せないのは、弁護人が何ら反発せず、「疑わしきは被告人の利益という大原則に基づく判決」と高く評価するかのようなコメントを出した点です。これだけから判断すると、被告人の無実を信じず、あるいは、真実などどうでもよく、無罪判決さえ取れればいいという態度で弁護したとしか思えません。普通なら、「無実の(と少なくとも弁護人は信じている)被告人に「疑いは濃厚」とは何事だ。控訴できないのが残念だ。」くらいのコメントを残してもいいところです。
真実は、真犯人と神のみが知るところですが、その中で人間のできること、また、その立場立場ですべきことをきちんとわきまえるべきだと思います。
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